オリンピックと競技

2025/11/01

オリンピック・パラリンピック

(あばうとアーチェリー 2013年6月)

 つい先日、レスリングと野球・ソフトボール、スカッシュが2020年夏季オリンピック実施競技の最終候補に残ったと報道された。これらの競技が1枠を競い、決定するのは9月だそうで。
 オリンピック競技になるかどうかは、その競技の普及に非常に大きく影響するため、どの団体も必死。競技普及のためには多くの人の目に触れる事が大切であり、アマチュアスポーツの場合はオリンピックが一番の宣伝だろう。人気競技でもない限り、単一競技の世界選手権や日本選手権など、試合がある事すら一般メディアは伝えない。
 もちろん選手にとっては世界選手権出場はすばらしく光栄な舞台だが、周囲の反応は天と地ほどの差があるだろう。オリンピック競技であるという事がどれほどの普及と宣伝効果を生み出すのか。

 1972年に復活したアーチェリーも、また実施競技から落ちそうと言われた頃がある。国際オリンピック委員会(IOC)が苦しい財政を立て直すため、放送権契約で収益を出そうとした頃。観戦して面白みの無い、視聴率が取れない競技は外しちゃえって。
 選手はシューティングラインに横一列に並び、淡々と弓を引く。 FITAダブルラウンド288射の合計点で勝者が決まる。カメラとしても、どこを映せばいいの? って感じだよね。
 何人かの有力選手にスポットを当てるにしても、ずらーっと並んでいる選手達がいるから、アングルの変化も付けにくい。しかも、競技時間が長い。ダブルラウンドなら朝から夕方まで、それを2日間。
 で、観戦が面白くなるように試合形式がずいぶんと変わった。詳しく書こうとしたら、すんごく長くなっちゃっうので、簡潔に。
 決勝はオリンピックラウンド(OR)というのを作り、1対1のトーナメントになった。

1920年 アントワープ大会 アーチェリー競技がはずされる
 (半世紀以上、実施なし!)
1972年 ミュンヘン大会 競技復活
1984年 ロサンゼルス大会 この回でFITAダブルラウンド終了(288射)。山本博 選手が男子個人、銅メダル。
1988年 ソウル大会 グランドFITA(予選後、上位者のみ進む試合を4回続ける)。団体戦も採用。
1992年 バルセロナ大会 OR制定(70m)、予選はFITAラウンド(144射)
1996年 アトランタ大会 予選も70mダブルに変更(72射)。
2012年 ロンドン大会 ORが合計点数ではなく、セットシステムを採用。3射1セットで勝てば2ポイント。最多5セットで、6ポイント先取が勝ち。古川高晴 選手が男子個人、銀メダル。女子団体(早川漣・蟹江美貴・川中香緒里の各選手)で銅メダル。

 その他にもORは当初1射40秒だったのが今では20秒!に。引き戻しするような時間の余裕がない。

スコープ

 また映像上、選手の顔が隠れてしまうので、脇に置くフィールド・スコープ(単眼鏡)の高さにも制限がかかった。なぜスコープが必要か? リカーブ競技は裸眼で狙ってる。70m先の的、矢がどこに当たったのか裸眼ではわからないのでスコープをのぞくのだ。その日の湿度や気温、風の影響等で、どこにズレたのか確認して修正するためだ。
 最初は選手の肩の高さまでだったのが、今では脇の下までの高さに変更された。つまりそれに合わせてスコープの土台の三脚の高さを調節する。

2025年追記:さらに年が進んで、今では選手の横にスコープすらも置けなくなってる! 斜め後ろの監督スペースで、監督が看的して声がけしてた! 記憶が曖昧だが、2021年東京オリンピックの時だと思う。それとも2024年パリだった?)

 全日本アーチェリー連盟もそれにならったルール改正をしたので、 普段の試合でもスコープを覗くのに、体をかがめざるをえなくなった。不便なので私は上から覗き込むタイプのスコープに買い替えた。上位大会のルールが、下位大会の試合にも影響する。

 1972年オリンピック競技に復活したため、身近な国体やインターハイ(え? 身近じゃない?)でも正式競技として採用された。
 国民体育大会(現:国民スポーツ大会)は1980年の第35回 栃の葉国体から。
 高校生にいたっては個別開催していた全国高校大会がインターハイへの参加可能になるのは1993年、第26回 栃木大会まで待たされている。
(それにしても、なぜどちらも栃木大会からなんだろう? べつに栃木県、アーチェリー盛んじゃないのに。弓道は盛んらしいけど。アーチェリーが日本に導入された頃は弓道連盟の洋弓部から始まったから? その関係? 謎だ)

 競技人口を増やすには、底辺人口を増やす事。
「インターハイがあるのなら高校にもアーチェリー部を作って選手を育てなければ」
「国体があるのなら選手を育ててチームを作らなければ」
 それが様々な普及活動になり、競技者だけでなく愛好者も増やしていくきっかけにもなる。ちなみに、現在は国体もインターハイも男女ともに70m。
 これがオリンピックから外れちゃったら? 国体だって外されちゃうかも。いや、多分外されると思う。だからこそ、どの競技団体もオリンピックから外されないよう、あるいは入れるよう努力するわけで。
 今回残ったスカッシュ、「えー、あれをどうやって放送すんの? 壁ばっかじゃん」と思ったら、4面透明アクリルのコートを開発したそうで。考えたなー。
 アーチェリーも、いつまた外されるかもしれないから常にビクビクですよ、マイナー競技は。
 なお、今までのオリンピック競技記録は世界アーチェリー連盟(WA)のウェブサイトにある。


その後:2013年9月に、2020夏季オリンピックでは追加1競技はレスリングに決まった。
野球(男子)・ソフトボール(女子)は2015年の追加種目に含まれ、復活した。
スカッシュは残念ながら採用ならず。がんばったのにねえ。

はじめに

3度目の場所は、ここ

カテゴリ

SSL標準装備の無料メールフォーム作成・管理ツール|フォームメーラー

QooQ