アーチェリーの歴史

（あばうとアーチェリー　2019年12月）

　そういえば、今までこのネタで書いた事が無かったなと思いつつ・・。

　弓と矢は、約１万年前の後期旧石器時代〜中石器時代に発明されたよう。

　南アフリカのシブドゥ洞窟より発掘された、最古の石の矢じり（64,000年前）および最古の骨の矢じり（61,000年前）があるが、必ずしもアローポイントとは言いきれず、槍の先端の可能性も否定できない。

　最も古い直接的な証拠は、1944年にデンマークのホルメゴール湿地から出土している。

（デンマーク国立博物館所蔵：紀元前7,000年頃と表記）

「ホルメガールの弓」と名付けられた２本の弓の材質はニレの木。全体の長さは1.50 m（5フィート）、ホルメガード型の弓は青銅器時代まで使用されていたとされる。

　またユネスコ文化遺産登録の石器時代の「イベリア半島の地中海入り江のロック・アート」のうち、スペイン・バレンシア州カステジョンでは人が弓矢を使った戦闘と思われる壁画が存在している（紀元前１万〜3,500年と推定）。

　弓矢は狩猟や戦いの道具として、あるいは宗教的儀式として、長く人類と共にあった。

　世界的に弓の引き方としては、主に３種。

・メディタレイニアン型（地中海方式）

　フィンガードロー（手指引き）。

　３、４本の指で弦を引き、親指は使用しない。

　矢は弓の左側につがえる。

・モンゴリアン型（蒙古方式）

　サムズドロー（親指引き）。

　親指を弦にかけ、他の指を添えて引く。

　矢は弓の右側につがえる。日本の弓道は、これにあたる。

・ピンチ型（原住民の弓）

　ピンチドロー（つまみ引き）

　親指と人差し指で弦をつまんで引く。

　アフリカの原住民に多く見られる。

　アーチェリーは、イギリス・フランスを中心とするメディタレイニアン型から発展したもので、ラテン語で弓を意味するアークス arcus が語源。

　その後、８〜９世紀に唐で開発されたハンドキャノンにより銃器の歴史が始まる。より携帯性と扱いやすさを追求しつつ進化した銃器は、15世紀にはオスマン帝国で銃を主兵器とする部隊も登場。

　高度な訓練を必要とした弓に比べ、雨には弱いものの、扱いが簡単で飛距離が長く、敵により大きい損害を与えられる銃が、時代の前面に立ったとも言える。

　時代遅れとなった弓は、銃の所有権を制限されていたいくつかの地域においては継続したものの、世界的には衰退してゆく。

　日本においては徳川幕府が銃の輸入及び製造を制限したため、弓術は武士の嗜（たしな）みとして、あるいは戦闘で使用されていた。

　イギリスでは16世紀ヘンリー８世（在位1509年4月22日 - 1547年1月28日）の時代、彼自身が熱心な射手であったため、まだ軍事的に利用されており、アーチェリーの練習を奨励した多数の法令が発行されている。

　後年の1682年、サー・ウィリアムウッド Sir William Wood 著「ボウマンの栄光、またはアーチェリーが復活した」によれば、ロンドンの射手たちは定期的にパレードや射撃試合を開催し、多くの人が参加した。1583年9月17日にロンドン市フィンスベリー地区を通る、3,000人の射手のパレードの鮮明な目撃者の証言が記述されている。

　しかし時代には抗えず、17世紀初頭には急速に減少。1627年2月にはロンドンでのロングボウ製造の深刻な衰退をうったえた、ロングボウ・メーカーの評議会議長への請願書があるほど。

　レクリエーションとして復活したのは、17世紀の半ば、チャールズ２世（在位1660〜1685年）の時代。

　ヘンリー８世同様、チャールズ２世も熱心なアーチャーで、1652年にフィンスベリーアーチャーズ協会が設立され、彼のイングランド王即位の翌年(1661年)、ロンドンでグランド アーチェリー パレードを開催。ハイドパークで400人の射手が見事なショーを披露したらしい。

　前述のサー・ウィリアムウッドの研究書はこのチャールズ２世に捧げられた物。また第２部にあたる「価値のあるショーの記憶とショーディッチ公爵の射撃」(1691年)は、トーマス・ロバーツの「英国のボウマン」(1801年)の巻末に再録。

　18世紀には着飾った貴族の社交の場としてのレクリエーション アーチェリーが盛んになり、やがてそれはすべての階級の間に広がっていく。

　1844年、イギリスのグランド ナショナル アーチェリー協会（現 アーチェリーGB）は最初の会議をヨークで開催する。次の10年間で徐々に贅沢なお祭りの慣行を削り、ルールは「ヨーク・ラウンド」として標準化された。アーチェリーが現代スポーツとしての形を成したといえる。

　　ヨーク ラウンド

　100ヤード（91.4m）72射

　80ヤード（73.1m）48射

　60ヤード（54.8m）24射

144射、満点1440点。ターゲットは4フィート（121.9cm）。

　現在のアウトドア・ターゲットの122cm的の元はこれだろうと推察できる。昔からどうして120cmじゃなくて122cmなんだろう、多分なにがしの単位に由来するんだろうと思っていたが、ここで答えが出た気がした。だからFITAラウンドの男子は90m・70m・50mに30mを足して144射なのだろうな。

　それにしても、あの頃の弓で90mを72射とか、きつすぎる。

　そしてアメリカ大陸に渡ったイギリスの清教徒によって、アメリカ合衆国にも広まる。

　40ヤード〜60ヤードと、ヨークラウンドに比べると短い距離と本数（計90本）による、アメリカン・ラウンドがある。

　ヨーロッパに広まったアーチェリーはアジアにも広まり、世界で行われるスポーツとなってゆく。各地域においてアーチェリー団体が存在し、ローカル大会から国際大会まで、多くの人々に愛好されているのだ。

　1896年から始まった近代オリンピック、しかしアーチェリーは1920年以来、残念ながら開催競技から除外されてしまう！

　ルールの統一と、国際的イベントの発展を通じてアーチェリーを世界に広めるため、フランス、チェコスロバキア、スウェーデン、ポーランド、アメリカ、イタリアの７カ国により、1931年に国際アーチェリー連盟（FITA：現 world archery）を設立。

　重要な目標はオリンピックにアーチェリーを再導入させる事。それは41年後の1972年にようやく実現し、現在に至る。

　また1948年イギリスのストーク・マンデヴィル病院にて、戦争で車椅子となった兵士達のリハビリのためのアーチェリー競技会が開催され、これが後のパラリンピックへと繋がってゆく。

　武器としての価値を失った弓は、娯楽、スポーツとして現代に残っている。

参考資料：色々読んでみると面白い。